4.27.2007

プロ野球の人間ドラマに酔う。

久しぶりに野球関連の書籍を読んだ。「マネーボール」以来かもしれない。「マネーボール」はビジネス書的側面が強かったが、今回は昨年開催されたWBCの裏側に密着したルポタージュで、選手達の素顔に迫ったその内容はプロ野球ものとしては稀に見る佳作だった。

タイトルは「屈辱と歓喜と真実と―“報道されなかった”王ジャパン121日間の舞台裏」(石田雄太著)。

本の中では、国の代表として世界と戦う機会を得たはずの選手達にあった温度差や、コーチングとは無縁の振る舞いを繰り返す鈍感なコーチ陣、そして大会の主催者であるMLBの杜撰な運営、NPBの求心力のなさなどが浮き彫りにされる。
それはあたかもドイツワールドカップにおけるA代表の内部崩壊を思わるが、しかしイチローや谷繁や宮本(彼らがいなかったらいったいどうなっていたのだろうか)を中心にまとまっていく選手達とそれを束ねる王監督のリーダーシップは、ヒデやツネ様、そしてジーコのそれとは違う結束力と勝利という結果をもたらす。

優勝に至るまでの過程を幾人かの選手にスポットを当てながら、現場にいた人間の確かな筆致で描く本書は非常に面白く「敗因と」とは一線を画す出来と言えよう。

個人的には黒田のエピソードにはホロリと来た。

投球数制限が設けられたWBC変則ルールにあって、第二先発という難しい役どころをまかされる予定だった彼はしかし、怪我のため合宿中に離脱。本戦には出られなかった。しかし投手陣の陰の柱として果たした役割、日の丸を背負って投げることの意味を背中で見せたその存在感は大きかったらしい。

そんな彼が不本意ながらチームを離れることになった際、カープのチームメイトである新井に残した言葉。

「WBCが終わってカープに戻ったら、お前の経験した野球を皆に伝えてくれ。それは必ずおまえの、そしてチームメイトの糧になる。それがお前の役目だぞ」

泣ける。黒田よ。読むよ。いますぐお前の記事@Numberを読むよ。

とにかくこの本、プロ野球ファンならずともおすすめの一冊。