4.01.2007

Technology and Management

去る3/20、高輪のプリンスホテルで催されたMOTシンポジウム初日に出席。

経済産業書の審議官による開会の挨拶に続いて、三菱電機会長による基調講演。三菱電機だ。ソシオテックの三菱電機ですよ。古いな。今はChanges for the Betterか。 この基調講演、MOTと三菱電機?と意表をついた人選と言えなくもないが、国(=経済産業省)がとんでもない額の予算を突っ込んでいるこのMOTコンソーシアムには、当初より三菱総研(MRI)がべったりと貼り付いているので、三菱系の人選はある意味納得とも言えよう。

それはさておき、会場には予想通りと言うか、予想外と言うか、いわゆるスーツ族中高年男性が多数を占め、いわゆるトラディショナルなシンポジウムの様相を呈していた。最近はネット系のシンポやセミナーに出ることの方が多いので、PCを開いているヒトもいない(会場にWiFiがないというのはテクノロジー系的にどうなんだろうか)、カジュアルな格好もほとんどいない、そして女性もいない(数人を確認したのみ)というのは、ある意味新鮮ではあったと言えよう。 しかし出てくる人間という人間、お話が・・・つまらない。MOTの実践現場にある人間がそう感じるのってのは、よろしくない事態だと思った。原因は、主催者側にもあるような気がする。だって国内外の教育機関でMOTを修めた人間を4人登壇させて並ばせているのに「パネルディスカッションではなく、各個人からの報告・発表となりますのでご了承ください」だもの。MRIさん、それでいいのでしょうか?(しかも自分が長く話しちゃって昼食前のセッションにも関わらず15分オーバー)

それはさておき。

このMOT、Management of Technologyは、技術経営とも訳されるが、どうもこのコンソーシアムによるその解釈と普及のための取り組みには、当初より身軽さと新しさが感じられない。国の施策だから当たり前なのかもしれあいが、必要以上にアカデミックな香りがプンプンする。そして産業側からアカデミックにすり寄っているような。アカデミックが産業を取り込もうとしているような。あくまでも印象ですけど。
で、くだらない話を聴きながら、そもそもMOTという発想・カテゴリが出現してきた背景はとひとり考えてみたが、思うにMOTの出現と(MBA的学問分野としての)隆盛は、情報技術の進歩によってナノテクやバイオといった先端技術の開発速度が上がり、かつ計算機(PC)の高速化、ネットワーク化によって大企業の研究所や有名大学でなくてもそういった開発を行えるようになってきたという環境の変化と密に関連しているのだろう。要するに三菱電機のような大企業、東大の先端研のような場所でなくても市場の動向を左右するような、あるいはブルーオーシャンを開拓できるような技術を産み出すことができる時代になってきたということだ。
そしてそうして生まれた技術は、時にとてつもなく大きな市場や産業を創り出し、かつビジネスでも圧倒的な成功を成し遂げる可能性を秘めている。古くはApple、90年代以降ではYahoo!、DELL、そしてGoogle。ただ多くの場合、大企業でない小さな組織や個人は、産み出した技術をビジネスに転換して行くにあたっての方法論やスキル(事業運営/経営ノウハウ)に欠けているケースが多く、そのことが優れた技術がイコール事業の成功に結びつかない最大の理由とされてきた。で、そうした機会損失(?)を補完するためのMOTが生まれてきた、と。

なので、個人的には本来、MOT発祥の地である米国におけるMOTは"技術者によるベンチャー"を想定しているという印象を持っている。もちろん、GEやGM、ハネウェルなどの大企業も含むのだろうが、その本質は、R&Dに必要な資金や人材をどう確保してマネジメントしていくかに始まり、技術を市場のニーズとどうマッチングさせてPRしていくかなどのマーケティングやプロダクト企画に関わるフレームワークやノウハウを身につけ、それらを変化の速い環境下でいかに実践していくかを学ぶことにあるのでは?つまり「ビジネスを興したい技術者」と「技術をビジネスにしたい経営者」を対象とした、実践的な学問領域であるのではなかろーか。

しかしながら、このシンポジウムで語られていたのは、企業の基礎研究部門をどうマネジメントしていくかだったり、経営を学ばせることで技術者の思考パターンを変えていくことだったり・・・。もちろん間違ってはいないんだろうが、本当に世の中を変えていく革新的な技術や、市場をリードするようなビジネス組織を産み出し、維持していくということに関してはあまり触れられず、MOTよいうよりは「重厚長大理系企業における技術者をどう元気にするか(笑)」を一生懸命考える会だったような気がした。

それはまた別の問題だと思うんだが。Knowledg Dynamics Initiative とかの仕事じゃないか、それは?

その後、Y先輩と新橋でMOTシンポを肴に飲み、technologyに必要なのはmanagementではなく、promotionやdesignではないかという話になったが、それについてはまた別途。

以上、雑感。

 

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